少々待っていたはずなトコ(笑) 「もう、こんなに夜更けになってるのに」 それなのにこんな明るい夜だなんて酷すぎる。 「夜じゃないと、こんなことはできないさ」 「この前、昼に抱いたくせに」 言いたいことは、そんなことじゃない。 「瑜、」 衣擦れの音に慣れた耳は、もう何も反応しない。 わざとだったのかどうかも忘れた。緩く結んでいた帯が、するするとほどかれていく。 外気に晒されても、寒くないっていうのはいい。 「誰にこんなに痕をつけられた?」 「知らない」 「今日は眠らせないからな」 「いいけど、もう」 でも、触れられて安心するのはこの人の指だけだ。 目を閉じていても、すぐに分かる。反応できる。 この指を際だたせるために、他の指に触れられているのだとしたら。 もう自分は相当重傷なのだろう。 誰かがつけた徴の上を、さらにきつく吸われる。 「歯、立てないでよ」 「今日はお前の言うことは聞かない」 きっと赤くなって、明日まで残るのだろう。 そんなこと、嬉しくなんかないはずだった。 「痛いのは、嫌だって言ったのに」 ほどかれた帯で、手首を合わせて結わえられる。 「これ、どういう趣向?」 「お前がいたずらできないようにしておかないと」 「今日は、私に何もさせてくれないんだ?」 「もう喋るな」 きつく結ばれた訳じゃない。ほどこうと思えば、すぐにほどける。 それでも、これを外そうとは思わなかった。 「枷みたい」 「枷のつもりだからな」 「足りないよ?」 余裕が欲しかった。 笑ってみせることで、自分に余裕を残しておきたかった。 「そんなこと、言えないようにしてやると言ったじゃないか」 にやりと笑われても、困る。 それでもこんなの、酷すぎる。 「いつまで、こんなこと、」 「こんなことって、何だ?」 「言わせるつもりなの?」 ずっとだ。 さっきから、肝心なところには触れもしないで、それなのに反応するところばかり責め立ててくる。 いつもなら、自分の方から動いてその気にさせられるのに、それもかなわない。 「こんなじれったいの、やだよ」 「だから、お仕置きだと言っただろう」 近づいてくる快感の、最後のところがつかめなくて苦しい。 「ちゃんと、してよ」 もうこの手がほどきたい。 牀の布の上をすべらせて、帯をほどこうとした。 「駄目だ」 「なんで?」 すぐに片手で押さえ込まれる。 「そんなに、して欲しいか」 いつもなら、余裕があるのは自分の方なのに、今日は逆転していて悔しい。 でも、限界なのに最後の限界が来ないだなんて苦しいだけだ。 「して。触ってよ」 待っているだけなんて嫌だ。 「触らない」 「酷い……っ」 こんな寸前で止められるのが一番困る。 「まあ、お前がそんなにイきたいんなら、こっちで協力してやろう」 「は?」 「あんまり酷いのも嫌だろうしな」 にっこり笑う孫堅が、怖い。 また、この笑い方だ。 「あの、」 望んでいたのではなく、その奥の方へと指がたどってくる。 「待って?」 「待たない」 手をつかまれたままで、身動きがとれない。 「準備が……」 「馴らされてきたのだろう」 「……」 その通りすぎて何も言えない。 「瑜、」 「……っ」 いきなりすぎる。 「も、離してよ……っ」 「駄目だ」 とっくに限界なんて超えてしまった。 膝に座らされらまま、何度も突き上げられて意識が飛びそうになる。 「無理、だって……」 何が無理なんだかもう自分でも分からない。 「文台さま、」 名前を呼ぶことしかできなくなって、どうしようもない。 「文台さま……ぁ」 きっと爪が伸びている。背中に傷を作ったかもしれない。 そんなことさえ、どうでもいい。 愛されてるってだけで、死にそうだった。 「文台さま、だけだから」 「分かってる」 何が? そんなの、私にさえ分からないのに。 分からなくていい、今は。 「もう分かんなくしてよ、」 |
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